イベント運営の全て教えます。今日からあなたもイベンター!
企業イベントを成功させるためにはイベントの企画・運営などの基本的な流れを把握し、要所要所のポイントを押さえておくことが重要です。
本稿では企業イベントを担当する方に向けて、イベント企画・運営の全体像を解説するとともに、ぜひとも知っておいて頂きたいノウハウをご紹介します。
目次
1.「企業イベント」概論
「企業イベント」とは、文字通り企業が主催するイベントを指して使われる言葉です。
顧客向けの製品発表会や株主総会、パーティ、社員を対象とした事業計画発表会や会社説明会など、様々なイベントがあります。企業イベントの趣旨や内容は多岐にわたりますが、いずれの場合も、ビジネス上の利益や満足度向上など、明確な目的を打ち立てて行われることがほとんどです。
1-1.イベント開催の目的を明確にしよう
企業イベントの企画立案を行う際には、イベントの目的、すなわち「何のためにそのイベントを開催するのか」という点を明確にしておくことが重要です。イベント開催の目的を明文化して定義しておくことでブレのないイベント企画の作成が可能となり、関係者間での認識の共有が行いやすくなります。
この際、できるだけ具体的な目的を設定するということがポイントです。
企業活動の究極の目的は「利益を上げること」にあるといえますが、これをそのままイベントの目的とするのは無理があります。
例えば、採用活動の一環として行う会社説明会は、良い人材を獲得することで企業の成長を促進し、今よりも高い利益を得るために行うと考えることができるでしょう。とはいえ、会社説明会の目的を「利益の向上」と定義してしまっては、イベント企画・運営の指針としてはあまり役に立ちません。目的の指し示す地点が、開催するイベント自体で得たい成果から離れすぎているのです。
新卒者向けの会社説明会や転職フェアなどで行われる合同説明会であれば「面接応募者数の増加」、顧客向けの製品発表会なら「製品の認知度向上」、社外モニターを集めて行う座談会のようなイベントなら「顧客とのエンゲージメント強化」…というように、そのイベントで目指したい具体的な成果を目的として定義するようにしましょう。
もう一つのポイントは、大それた目的やテーマを設定しすぎないということが重要です。
イベントはあくまでも目的を達成するための一つの「きっかけ」の役割しか担えません。商品説明会を開催するだけで即座に顧客が増えるわけではありませんし、事業計画発表会を開催したからといって、それだけで従業員の意欲が一気に高まるわけでもありません。イベントは最終的な目標に近づくための「最初の一歩」と心得て、等身大の目的やテーマを設定するよう心がけましょう。
大切なポイントは目的をできる限り一つに絞ること。
前出の会社説明会であれば、「求職者に自社について知ってもらう」「求職者とのコミュニケーションを図る」「求人募集に応募してもらう」…等々、いくつかの目的が考えられますが、これらをすべて列挙するのではなく、もっとも重視したいものを一つ選んで目的にしましょう。あれもこれもと欲張るよりも、シンプルに一つに絞った方が成果の見込める企画を立案しやすくなります。
1-2.イベントのターゲットは誰か?
イベントの目的が明確になったところで実際に企画を立てていきますが、この際に念頭においておくべきなのは、「ターゲットの関心を惹くこと」を重視して考えるということです。
イベントの趣旨がどれだけ立派で崇高なものであっても、参加するターゲットの関心を惹き付けることができなければ、そもそもイベントに参加してもらうことができません。参加してもらうことが出来たとしても、「面白かった」「有意義だった」と参加者に感じてもらえなければ、イベントの効果は半減してしまいます。
ターゲットの関心を惹くために有効な手法の一つが、話題性や意外性を狙うというテクニックです。
例えば、昨今は社会的に人工知能(AI)への関心が高まっていますが、こうした話題性の高い要素をイベントに盛り込むことで「おっ、面白そうだな」とより強く関心を持ってもらえる可能性が高まります。また、一見あまり関連がなさそうに思える他業種の企業と合同イベントを開催するのも意外性があり有効な施策です。
近年になって日本国内にマーケティングの重要性が浸透してきていることもあり、多くの企業がマーケティング目的でイベントやセミナーを開催しています。競合他社のイベントに埋もれてしまわないよう、ターゲットが惹き付けられる企画を立てるように心がけてください。
1-3.アイデアは「0から作らない」
企業イベントの企画を立案するにあたって、具体的にどのようなイベントにすべきかのアイデアが浮かばないことも時にはあると思います。そんな場合は、他社のイベント事例を参考にするのも良い方法です。
もちろん、完全に真似をするのは企業倫理的に問題があります。それではターゲットの関心を惹くことはできません。あくまでもアイデアの部分だけを参考にするに留め、具体的なテーマや内容については自社オリジナルの企画を立案することが大切です。
また、ターゲットに対してイベント開催に関するアンケートを行い、その結果を参考に企画を立てるという手法もしばしば用いられます。社内向けのイベントであれば、この手法は有効です。
ちなみに、近年になって注目を集めているものに、双方向性を意識した企業イベントがあります。これは、主催者側から一方的に情報を提示するだけではなく、参加者からのフィードバックを得ることをも目的に含めるような形のイベントです。参加者からのフィードバックは最終的にコンテンツに落とし込んで活用できるため、企業にとってはメリットのある手法です。
参加者からのフィードバックを得る施策の一つにソーシャルメディアを活用する方法があります。
これについては、弊社ブログ「SNSを有効活用、セミナー企画者が知って得する4つの施策」に詳しくあります。
1-4.イベントのコンテンツを用意する
イベントの内容であるコンテンツを用意する際、6W2Hを意識することで良いコンテンツをお届けできるようになります。6W2Hとは、以下の8つの単語の略です。
・why:なぜ
・who:誰が
・whom:誰に
・what:何を
・when:いつ
・where:どこで
・how:どのように
・how much:どれだけ
この6W2Hを意識してコンテンツを作成することで良いコンテンツになります。
まず、whyでは、イベントを実施する動機や理由を決めます。その際、イベントを通じてどんなことを達成したいかも決めておきましょう。
次に、whoです。whoでは、イベントを誰が開催するのかを決定します。そのため、このタイミングでイベントの主催や関係者などの協力者が決まります。また、主催者はイベントで起こった責任をになうことになるため、時間をかけて決めるようにしましょう。
whomでは、イベントを誰にお届けするのかを決めます。そのため、イベントに参加してほしいターゲットをこのタイミングで決定します。また、ターゲットが明確なほどイベントのコンテンツを決定しやすくなります。
whatでは、イベントを開催することで参加者に何を届けられるかを決定します。そのため、イベントのコンテンツをこのタイミングで大まかに決めていきます。また、イベント開催後に参加者にとってほしいアクションを引き出すためにとても重要な工程になります。
whenでは、イベントをいつ開催するか決定します。このタイミングでイベントを開催する日程や時刻を大まかに決めていきます。そのため、イベントに多くの方が参加できるように日程を組む必要があり、どのように告知するのかも決めていくため、とても重要な工程になります。
whereでは、イベントをどこで開催するのかを決めていきます。イベントを開催する場所によっては、参加者の数が減少してしまう可能性もあるため、慎重に選ぶようにしましょう。
howでは、イベントをどのように開催すれば参加者のニーズに応えられるかを考えていきます。イベントを開催する一番の目的は、イベント開催後の参加者のアクションを引き出すことです。そのため、この工程で参加者のニーズに応えるために必要なことを洗い出し、良いイベントが開催できるようにしましょう。
how muchでは、イベントを開催するためにどのくらいの費用がかかるのかを調べます。そのため、この工程でイベントの予算を決定していきます。コストを削減できるところはしっかりと削減し、イベントの重要な部分にはコストをかけ、良いコンテンツをお届けできるようにしましょう。
この6W2Hの8つのことを意識してイベントのコンテンツを用意することで、参加者のニーズに応えられる良いイベントを開催することができるようになります。
2.スケジュールを作成しよう
イベントの企画立案が完了したら、実際のイベント開催に向けて準備・段取りを行います。
人とモノがダイナミックに動くイベントやセミナーでは様々な準備が必要です。できる限りトラブルや失敗を回避するため、事前に準備・段取りすべきタスクを洗い出し、当日の運営も含めた進行スケジュールを明確にした上で、イベントの実施計画書や運営マニュアルを作成しておくと良いでしょう。
実施計画書とは、イベントの目的や趣旨、スタッフの体制図やおおまかなスケジュールなどをまとめた最上位のドキュメントで、これを具体的なオペレーションに落とし込み運営マニュアルを作成します。
2-1.イベントを開催する日程を決める
イベント開催の計画が具体化したら、イベントを開催する日程を決めます。
イベントを開催する日程は、ターゲットにしている参加者が多く参加できる土日や祝日に行うことで、多くの方のニーズに応えられます。また、日程と同時にイベントを開催する時間も決定しましょう。土日や祝日なら参加しやすいお昼頃、平日に行う場合は多くの仕事が終業している18時以降など参加者に合わせて決定するようにしましょう。
2-2.イベントを開催する会場を決める
イベントを開催する日程を決めたら、イベントを開催する会場を決めます。
イベントを開催する会場は、イベント開催の計画の際、どのくらいの人数を対象にして行うかによって変わります。対象の人数が多い場合には、大きな会場を用意する必要があります。また、駅の近くなどの会場を用意することで参加しやすくなります。
2-3.イベントを告知しよう
イベントの計画が具体化したら、イベントの告知・宣伝を行います。
集客の方法はイベントの性質によっても変わるため一概には言えませんが、社内向けのイベントであれば、全社メールの配信や社内ポータルへの掲載、各部署のリーダーを通じての口頭での告知といった手段を用いるのが一般的です。社外向けのイベントであれば、リードリストに対してメールマガジンで告知や、ポータルサイトへ広告を掲載することが多いでしょう。
不特定多数の一般消費者を対象としたBtoCのイベントの場合、ターゲットが集まりそうな場所にチラシを配置したり、街頭でチラシを配るといったアナログな方法が有効な場合もあります。
なお、どう考えても必要な人数の来場者を集客できそうにない場合は、イベント開催の必要性にまで立ち返って計画を見直す必要もあるかもしれません。イベント開催を前提として考えるのではなく、本当にイベントを開催する必要があるのか、他の手段で結果を求めることはできないのかを再検討することも、場合によっては必要です。
2-4.アンケートを作成しよう
本稿の冒頭で、企業のイベントは必ず何らかの目的のもとに開催されるとお話しました。イベントの目的が達成されているかを確かめる手段の一つとして、しばしば用いられるのが来場者アンケートです。
来場者アンケートを設計する際にはイベントの目的を改めて確認した上で、定量的に測定できるように数値や指標を入れた質問項目を設定しましょう。イベント参加者にどのような態度変容を起こしてもらいたいのかを明らかにし、主催者の意図や目的が正しく伝わったかをアンケートから読み取れるようにすることが大切です。
2-5.運営マニュアルに欠かせない9つのマニュアル
運営マニュアルは実際にイベントの準備・運営を勧めていく上での指針となる重要なドキュメントです。また、事前に運営マニュアルを作成することで、準備段階での抜け漏れを防ぐことができます。
運営マニュアルに入れる重要項目は下記9点が中心となります。
▼運営組織図
イベント当日の運営を担当する組織・チームの体制を示すもの。外部のパートナーに一部のタスクをアウトソーシングする場合は、それも含めて記載します。
▼全体タイムスケジュール
イベント当日の各部屋、各セクション担当者の動きを時系列で記載します。
▼当日プログラム
当日のプログラム内容を具体的に記載します。
▼施設利用計画
イベントで使用する会場や控え室、クロークなどの場所と利用時間を図示します。
▼レイアウト図面
会場のレイアウトに関する情報を記載します。セミナーのようなイベントであれば座席順、展示会のようなイベントであればブースの配置なども明確にしておきます。
▼オペレーション計画
受付や誘導をはじめとする、各セクションにおける運用計画を記載します。誰がどのような作業を担当し、どんな手順で進めるのかを明確にします。
▼サイン計画
会場に設置する案内板(会場への誘導、お手洗いの場所など)に関する情報を記載します。
▼緊急時/トラブル対応
急病人対応や避難計画など想定されるトラブル対処フローを記載します。
▼備品リスト
イベントで使用する機材や備品のリストを作成します。
この中でも特に重要なのが、「備品リスト」です。というのも、スケジュールやオペレーション上の問題は当日の機転で切り抜けることができても、「必要なものが用意されていない」という失敗をカバーするのは難しいためです。
例えば、来場者受付のオペレーション計画に不備があり多少受付開始時間が遅れたとしても、その後の時間調整などでカバーすることは可能です。しかし、受付で利用する来場者リストがなければ受付作業をすること自体が困難です。
備品リストの作成は難しく、経験の浅い担当者が一人で行うのは若干荷が重いかもしれません。イベント運営経験者にヒアリングするなどして、抜け・漏れのないリストを作成するようにしてください。
また、ニューズベースでは大規模なセミナーに合わせた備品リストをご用意しています。
こちらを是非ご活用下さい。
2-6.イベント管理ツールを活用しよう
ここまででイベントの準備段階についていくつかのポイントをご紹介しましたが、こうした作業を効率よく進めるにあたって、イベント管理ツールが強い味方となる場合があります。
イベント管理ツールにも様々なものがありますが、最近はCRM(顧客管理システム)やMA(マーケティングオートメーション)などにイベント管理機能が搭載されていることが多く、こうしたものを利用して全体管理を行うのもよい方法です。
個別のタスクで用いるものとしては、参加登録から受付までを半自動化するツールや、来場者アンケートの作成・実施を支援するツールなどがあります。代表的なツールに、Peatix(ピーティックス)、EventRegist(イベントレジスト)、Event Cloud Mix(イベントクラウドミックス)などがあります。
いずれの場合も、自社のイベントの性質にそのツールがマッチしているかどうかを見極めた上で導入するようにしましょう。効率化のために導入したツールに振り回されて、本来やりたかったことができなくなっては本末転倒です。
3.イベント当日の運営
3-1. イベントの受付
イベント当日の運営において、非常に重要な位置づけとなるのが来場者受付です。受付は来場者と主催者が最初に顔を合わせる場であり、イベントの第一印象を決めるシーンでもあるため準備段階から念入りに設置・オペレーションを検討しましょう。
受付のオペレーションを設計する上でのポイントは来場者数と受付に割ける時間から逆算して考えることです。また、会場のレイアウトを踏まえて受付から会場へとスムーズに人が流れるような導線の配慮も大切です。
3-2. 参加者目線でスケジュールを作成しよう
進行スケジュール作成時のポイントは、参加者の目線になってスケジュールを設計するということです。例えば細かい話になりますが、セミナーの合間の休憩時間のとり方は、参加者の男女比によって適時調整する必要があります。
男性がメインであれば5分程度の休憩時間でも十分間に合いますが、女性の参加者が多い場合は、お手洗いが混雑して時間がかかる場合があります。このあたりについては、会場の設備などもあわせて検討すると良いでしょう。
3-3. トラブルの発生を想定しよう
イベント当日には様々な不測の事態が起こり得ます。そのような場面でいかに臨機応変に立ち回ることができるかが、イベント運営者の腕の見せ所です。
想定することの難しい、あらゆるトラブルに備えて準備しておくことは不可能だとしても、発生の可能性が高い問題については、あらかじめ対応フローなどを検討し対策を立てておくと、安心して当日に臨めます。
例えば、当日の天候や公共交通機関の状況により、受付時間内に来場者が到着できないということはしばしば起こります。台風や積雪のシーズンにイベントを開催するのであれば、そうしたトラブルが発生する可能性が高いことを考慮に入れて、会場の利用時間に余裕を持たせておくなどの配慮をしておくと良いでしょう。
3-4. イベント終了後の作業について
イベント終了後に行う作業について触れておきます。イベントが無事終了すると、担当者はホッと一息ついたような気持ちになりますが、企業のイベントは終了後が本番であるとも言えます。
来場者アンケートを実施した場合はアンケートの集計を行う必要がありますし、見込顧客獲得を目的としたイベントであれば、来場者から受け取った名刺をハウスリストに登録した上で、来場のお礼メールなどを送信する必要もあります。会社に対してイベント開催レポートなどを提出する必要がある場合は、そうしたドキュメントを作成する作業も発生するでしょう。
何よりも重要なのは、開催したイベントを振り返って効果測定を行い、次回に向けての改善ポイントを洗い出すということです。事前に定義したイベントの目的はどの程度達成できたのか、今回のイベントの失敗点はどこか、といったことを客観的な視点で明らかにしておきましょう。
4.イベントプランナーになるには
良いイベントを企画するイベントプランナーですが、イベントプランナーになるために資格などは不要です。
イベント会社や広告会社に就職することでイベントプランナーの業務に携わることができます。良いイベントプランナーになるために必要なことは、多くの企画に携わることです。多くの企画に携わることで、イベントプランナーに必要なことが段々分かってきます。そして、分かったことをアウトプットすることで、イベントプランナーとしてのレベルが上がっていきます。